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白猫リリーちゃんと耳カットの大切さ

この春同じ地区に住んでいるボランティアのKさんから、私たちと同じ地区で暮らしているオッドアイのメスの白猫ちゃんの情報を聞きました。三年ほど前から時々見かけていて、その時は真っ白で健康的で綺麗だったから、どこかで飼われている猫が家と外を出入りしているのかなと思っていたそうです。

でもある日久しぶりにその猫ちゃんを見ると、前に比べて痩せていて薄汚れているのが気にかかりご近所の方に訊ねてみると、この子は元々野良猫で、いつも餌をあげている人が一か月ほど前に引っ越していったと聞いたそうです。

帰らぬ餌やりさんを、ずっと待ち続けているのかな。そう思うと胸が痛みました。


それなら、これからは私達で交代で餌をあげに行こうという事になり、餌をあげるならこの子を避妊しなくてはと、まずはこの子に本当に飼い主が居ないか調べた上で手術の予約を入れました。

寂しそうな表情の白猫ちゃん。写真では分かりにくいですが、本来真っ白であるはずの毛が全身薄汚れていました。

私達はこの子に、リリーちゃんと名前を付けました。


ボランティアさんに場所を教わり、この日初めて餌やりに行きましたが、リリーちゃんは初めて会った私にも人懐っこくてとても人馴れしていました。でも餌をあげてもあまり食べずお腹が空いてないようです。誰かから餌を貰ってるのかな?


同じく別の日に行ったボランティアさんからも、餌をあまり食べなかったと聞いたので、もう一度Kさんがご近所の方に聞き込みに行ったところ、実はリリーちゃん、ご近所のご年配のご婦人や、周辺アパートに住む学生さん、そして若いご夫婦など、色んな人から可愛がられ餌も貰っている事がわかったのです。あまり行動範囲も広くなく、だいたい同じ場所にいるリリーちゃん。


沢山の優しい餌やりさんがいるなら、不妊手術を施せば地域猫として見守っていけて私達も安心できます。

ただ安心する反面、こんなに人懐っこいと、外で暮らすにはちょっと危険な気もしました。

安易に連れて帰られ見知らぬ場所に捨てられたり、一番怖いのは、悪意を持った人から虐待を受ける可能性もあるからです。地域猫として生きていくなら、餌を貰っていても人間とは程よい距離を置き、見知らぬ人からは逃げる位の警戒心を持って欲しいところです。


手術が終わったら、元の場所に戻す予定ではありましたが、できる事ならリリーちゃんを里親に迎えてくれる人がいればなと思っていました。こんなに人が大好きなら、きっと里親さんが見つかるのではないかと。


そんな事を思いながらも、手術の前日にキャリーを持って現場に向かいました。

しかしいつもいるはずのリリーちゃんがいない‥

あちこち捜しまわっている間、手術をする事を知らせていた若いご夫婦の餌やりさん宅を訪ねると、なんと、事前にリリーちゃんを家の中で保護してくれていました。


とても穏やかで優しいご夫婦は、ずっとリリーちゃんを可愛がってくれていたようで、いずれこの子の里親探しをしたい話をすると、自分達で受け入れられるならと、少し迷いながらも前向きな考えを示してくれました。勿論受け入れ準備や心の準備も必要ですが、こんな身近な方が里親さんになってくれるなら理想的だなと思いました。


リリーちゃんはすんなりとキャリーに入った後一晩Kさんが預かり、こうしてスムーズに病院へ連れて行ける事になったのですが、ここで意外な事実が発覚しました。なんとリリーちゃん、すでに避妊済みだった事が判明したのです。


私達も、この時期に外で暮らしながらも妊娠も出産した形跡も無い事に少し引っかかっていて、獣医師さんに事前に話はしていたけど、メス猫はお腹を開かない事には避妊してるかどうか確かめようがないそうで、だからこそ、唯一の不妊手術済みの証である耳カットは大切なのです。そうすれば、二度も麻酔をかけお腹を開く必要もないのですから。


地域の餌やりさんが実費で手術してくれていたのか、元々飼い猫だったのかは誰にもわかりません。リリーちゃんは地域に返す予定だったので、今回改めて耳カットをして貰い、ついでにノミダニ駆除とワクチンと感染症の血液検査もして貰いました。



病院に一泊した後、リリーちゃんをお迎えに行きました。

改めて獣医師の先生から説明を受け、既に避妊済みだった事と、術後の状態も血液検査も問題なく、エイズ白血病の検査も陰性でした。健康体だった事にホッと胸を撫でおろし、暫くの間ボランティアのYさんが家で養生させてくれる事になりました。



Yさんは得意なDIYで手作りの大きなケージを用意して、受け入れ態勢は万全に整えてくれていました。しかも里親さん探すならこのまま家で預かっていいよと言ってくれて、その後もリリーちゃんの為に毎日丁寧にお世話してくれました。


外でずっと暮らしていたため、いくら人懐っこくても外に出たがるリリーちゃんに、少しでも家で過ごす心地良さを知って貰うために、ケアしながら愛情をいっぱいにスキンシップを心掛けてくれたおかげで、リリーちゃんは日増しにその愛情に応えてくれるようになったそうです。


そしてその間なんと、ありがたい事に手術前に保護してくれていたご夫婦が、リリーちゃんを正式にお迎えしたいと改めて申し出てくれたのです。早速ボランティアのKさんが、猫を飼うために揃える必要なものを教えたりとサポートしながら、準備が整った餌やりさんのお宅へ行く日がやってきました。


住み慣れた地域に戻って来て、お部屋の環境も見せて貰いました。お部屋には新品の大きなケージや猫トイレに猫ベッド、各種フードや器、そして爪とぎや遊び道具など沢山の猫グッズが用意されていました。


いつもお腹が空くとご夫婦の玄関の前やベランダに来てはご飯を催促したり、今年の大寒波が襲った日には家に入れてあげたりと、優しいご夫婦のリリーちゃんとのエピソードを聞きながら、私たちの地区のグループ名で譲渡契約を結びました。




今まで外で暮らしていたため薄汚れていたリリーちゃんを、ボランティアのYさんが丁寧にケアしてくれたお蔭で真っ白になっていて、その姿にご夫婦も驚いていました。

これから家猫として暮らしていく内に、もっと美しい猫ちゃんになるだろうなと思います。


まだまだ外に出たがると思うし、これまでの関係と違って家猫を迎える事に責任の重さは大きく戸惑いもあると思いますが、せっかく近所に住んでいるのですから、困った時はいつでもサポートしていこうと思います。


いつか外に居た頃の自由気ままな暮らしから、この家が安全で清潔で安心できる自分の居場所であり、このご夫婦が家族なんだとリリーちゃんが思う日が来てほしいし、その日が来るのも近いと思っています。


リリーちゃんを迎えて下さり、本当にありがとうございました。

末永くお幸せに。


今回は同じグループのボランティアさん達と良い連携プレイができたと思います。

そんなボランティアKさんは、現在別の地区のボランティアさんの代わりに怪我をした地域猫ちゃんを預かっていてお世話しています。この子もいずれ里親さんを見つけたいと思っています。

リリーちゃんを預かってくれていたYさんは、生後間もない二匹の仔猫を新たに保護する事になり、今寝不足になりながらも愛情込めてお世話しています。


この仔猫ちゃんを始め、今回のリリーちゃんのように地域猫には向かない子達も合わせて、今後みんなで協力しながら、里親探しをしていく予定です。

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